オーケストリオン ｜パット・メセニー

オーケストリオン
パット・メセニー
ワーナーミュージック・ジャパン
発売日 2010-01-27
価格：￥2,680(税込)
発送可能時期：在庫あり。
オススメ度：★★★★

まったくパット・メセニーというア−ティストは，どこまでどん欲なのだろうか。一人でプレイヤー・ピアノをはじめとする自動演奏システムを駆使して，アンサンブルを奏でてしまうのだから! もう一度言うが，一人で，だ。 だが，これで度肝を抜かれるのはまだ早い。今回のパット，音楽表現の可能性を追求しつくしジャズ・オーケストラの未踏の地平へとたどり着いてしまった。既存の価値観に大転換が起こりそうな2010年代，その幕開けに相応しい野心作。

スチームパンク 2010-01-29
プレビューを読んで、自動演奏楽器とのジョイントと言うことで、「？？」でした。

なんだか、日本や欧州のからくり人形とオルゴールの融合したものや、プレーヤーピアノなどが思い浮かび、不思議なイメージを抱いていました。



CDが手元に来てジャケットなどの写真を見て思わず噴出しそうになったのは私だけではないでしょう。

音楽の製作現場というより、悪夢じみた化学実験室のよう。ビンに液体が詰まって並んでる姿（これも楽器）などは当然そうしたイメージを意図して作られたことを物語っています。



パット自身も「子供の頃の夢」とライナーで語っていますが、学研の『科学』で育った時代の身からすれば大変よく理解できる動機です。

基礎的な科学知識は無いけれど、身の回りにあるものや僅かな情報を組み合わせて心の中で、あるいは紙の上で、更には道具を持ち出して切り張りを始めて何かを作ろうとしたことのその延長にあるように思います。



金も出来、技術もあり、更に実現すべき「音楽」と言う目標もある。

確かに「やっちゃったー」と見るのもいいでしょう。そういう反応も当然パット自身予想していること。

しかし一歩進めて、このプロジェクトの真の価値は「オーケストリオン」を引き連れてのライブにあると思います。



「さあさあ皆さんごらんあれ。世にも珍しい自動演奏楽器とトップミュージシャンによる即興ライブ。鬼が出るか蛇が出るか・・云々」



音楽については「いつもと同じ」と言う意見に賛成ですが、逆にそれでよかったし、パットの意図するものが見えやすいと私は思います。



楽器を「発明」とパットが言うように、今出来たばかりの新しいスタイル。多重録音に比べて、よりライブに向いたシステム。大いに期待したいです。



Web上に公開されているパットへのインタビューを読むと更にこのプロジェクトの凄みが伝わってきます。

単純にPCに打ち込んだデータをオーケストリオンが自動演奏しているものにパットが演奏を載せるという単純なものではないということがわかります。

どのような楽器でも「人間の運動能力」の限界を超える演奏は出来ませんが、このシステムではそれが可能です。今回のアルバムでも音の多彩さはそうしたことによる点も当然あるでしょう。

さらに、最初からライブパフォーマンスを意図したものであり、ジャケ写以上のシステムをステージに設置しコンサートをするとのこと。演奏はそのつど変更できるとのことですので「オーケストリオン」による即興とパットによる即興が繰り広げられます。

オフシャルサイトでもなんだかすごいことを言っているようですが、私の英語力では誤解が生じるのでここでは割愛します。



来日予定は6月とのこと。小さなジャズクラブやライブハウスでは収まらないのでホールコンサートだそうです。（小さなシステム構築で、小さなステージでも見たいです。オーケストリオントリオとか）

いずれにしても今から待ち遠しいです。


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この記事は2010/2/3に作成しました。

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